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バイマンスリーワーズ

Bimonthly Words

不易流行再考

1991年01月

湾岸戦争が深刻化し、昨年以上に激動が予測される91年度がスタートしました。
企業経営者にいかなる影響があるのか計り知れないものがありましょう。
一方国内では、土地問題、高金利といった問題が企業運営を圧迫している中で、
私達は、経営資源に対する考え方を根本的に見直す時期にきているように思えます。

企業経営者にとっていちばん気掛かりな経営資源が人材。
近年では「人材」を「人財」と考えるようになりましたが、
「人財」という認識をするようになってから、
人手不足問題が表面化したのはなんとも皮肉なものであります。

松尾芭蕉が「不易流行」という言葉を残しています。
基本は変えることなく、しかも時に応じて変えるべきところは変える、
ということですが、言い換えれば、
基本精神が確立していないまま、ただ流行に従うべきではない、ともいえるでしょう。

人手不足の昨今、この言葉をふと思いだし、一部の経営者と、
企業へ就職する学生の動きの中に、憂いにも似た感情を抱いてしまうのです。

会社は楽園ではないことをPRしているか

過日、地元新聞誌上で、日本電算社長の永守重信氏が次のように述べられています。

『ここ数年来、学生は複数の企業から採用内定をもらうことが常識化し、
 いかにたくさんの内定をもらうかが勲章だとうそぶく学生までいる。
 しかし、それはいかに自己の人生に対する、
 確固たる「信念」と「志」を持っていないかの証左であろう。

 そんな学生は、短期間で転職を図る「第二新卒」を生み出すことになる。
 そして企業は自ら生み出した「第二新卒」の補充のために、
 他社の「第二新卒」を採用するという、
 笑うに笑えない現象を引き起こしているのだ。

 これらの問題の第一は採用側にある。
 きらびやかな入社案内、そして会社説明会の場では一流ホテル並の独身寮があるとか、
 年間の休日はいくらとか、アフターファイブはこのように過ごせるなど、
 会社は「楽園」であるかのような内容が多いのに驚くばかりである。
 とにかく学生に媚び阿ることに懸命で、
 働くことの厳しさのPRが余りにも少ないのだ。』

働くことの原理原則は不易である

私は人々がなすべき業は「働く」ことと「学ぶ」ことの2点に集約されると考えています。なぜなら、永守重信氏がそうであるように、過去の歴史において成功をなし得た人は、
すべてこの2点について遂行されているからです。

「働く」ことの原理原則は今も昔も何一つ変わっていません。
すなわち、新商品の開発は、調査・分析・試作の繰り返しであり、
夜を徹して、というのも再三再四のことであり、
手品のように一瞬の内に新商品が出来上がるなんてあり得ません。

セールスマンの仕事もまた同じ。
何度も足を棒にして通いつめなければ注文をもらうことは難しいものです。

企業の能力以上に自分の能力を評価してしまっている学生が、
「楽園」に就職できたと大喜びしている日が、
苦しみのスタートであったことを思い知らされる日も遠くはないでしょう。
永守氏は、上場企業のトップでありながら敢えてこのように言われたのです。

松尾芭蕉のいう「不易流行」を「人財」について置き換えて考えてみましょう。
「人手不足→売り手市場」といわれる環境にあっても、
「働く」ことについての原理原則は何一つ変わりません。
この本質を企業の経営者、そして社員の方々も思い直す時期がきているように思います。

まさに「働く」「働くことができる」という考えは、
企業経営における「不易」と申せましょう。
「不易」にフタをして「楽園」を訴えるのは、本末顛倒と言わざるを得ません。

不易を確立しないで流行を追ってはならない

では、「流行」とは何か。
会社を「楽園化」し、そのPRに力点をおくことではありません。
それは、“採用の管理体制を確立すること”であると考えます。
かつて営業管理など不要であった流通業における「問屋」が、
今は営業管理体制を強化することが当然であるがごとく、
あらゆる企業が人材採用の仕組み作りに力を注ぐことになるでしょう。

「不易」が確立されないまま「流行」を追いかけると、
結局自らの墓穴を掘ることになるのではないか。
このことは就職を目指す学生はもちろん、
経済のリーダーである企業側が特に弁えることであろうと思うのです。

「働く」ことは尊いことであり、
「働く」からこそ人々が学び、成長していく。
この考え方があってこそ「企業」が成り立ち、経済活動が行われていく。
経営者にとって当たり前の真実を、声高らかに訴える時がきているのではないでしょうか。