バイマンスリーワーズ
Bimonthly Words
“Adios depend on” ~アディオス ディペンド オン~
先日、日本に来て大学生に英語を教える外国人教師と話をする機会がありました。
彼女は、外国語について理解力の乏しい私に対し、
片言の日本語も交えながら次のようなことを話しました。
「私は、日本にきて不思議であり残念に思うことがあります。
それは日本の大学生はとかく、自分の周りの人に頼ってしまうことです。
例えば、私が学生に何か英語で質問をぶつけたとします。
そうするとその学生はおどおどして、隣の学生にひそひそと聞いて頼るのです」
私は彼女の主張に対し、なるほどとうなずきました。
大学生に限らず日本人はすぐ何かに頼ってしまう(depend on…)習性があるのです。
私自身もしばしば似たような行動をとってしまっています。
例えば電話番号がわからないとか、
書類が見当たらないときなど自分で捜せるのに周りの人間に頼ってしまう。
結果、周りの人は大変な迷惑を被っているのです。
こんなことはまだまだ知れたことで、日本のビジネス社会では、
この“何かに頼る(depend on)”が蔓延しているように思えます。
最近の若者は、具体的な命令を下さないと動かないと嘆く管理者がいます。
そのような人達を「指示待ち族」と呼ぶようになったのはこのためです。
経営者からは“我社の管理者こそ指示待ち族だ”といった声も聞かれます。
俗にいわれる大企業病のことでしょう。
若者から幹部に至るまで、会社という実態のないモノに“depend on”してしまっているのです。
松下電器の谷井昭雄社長は、大企業病の定義について次のように説明しています。
(1)素直に聞かない
(2)叱らない、叱れない
(3)決まらない
(4)上を向いて仕事をする
(5)報告・説明はうまいが率先してやろうとない
(6)目的があいまいなら、責任の所在もはっきりしない
いずれもなるほどとうなずけるものばかりです。
でもこれらは何も大企業だけで起こる現象でなく、
中堅・中小企業でもこのような状態に陥ることに気がつきます。
そしてこれらの現象は全て、
“depend on (頼る)”
の心理が原因となっていることが見えてくるのです。
“depend on”の効用と反動
しかしながら“depend on”が必ずしも悪いというわけではありません。
“depend on”の心理が今日の経済大国日本を創り出した要因の1つであることは否めません。
例えば、メーカーの系列化政策、株の持ち合いによる株主安定化政策などがそれです。
もたれ合いであるとの非難を諸外国から受けていますが、
互いが頼り頼られ、結果として堅固でスケールの大きな集団が次々と創出され、
世界をリードする経済国家となったのはまぎれもない事実なのです。
また、人に頼る気持ちは相手とのコミュニケーションを促進し、
信頼関係が強化され、業務が円滑に進むことにもなります。
これまで日本の企業が成功を重ねてきた要因として、
“depend on”の心理が大きく寄与していたことは間違いのないところでしょう。
ところが企業経営者が心すべきことは、
過去の成功要因は往々にして今後の足かせとなることが多くあるということです。
例えば、
・あらゆる面で有能な一人の経営幹部の活躍で成功してきた企業が、
その幹部なしでは動かない組織となってしまい、
今ではその幹部が部下の成長を阻害してしまっている例
・大手量販店でのテナント出店で多店舗化に成功した企業が、
今では大手量販店の打ち出す制約の中でがんじがらめになっている例
など、その例には枚挙に遑がありません。
“depend on”という過去の成功要因は、堅固でスケールの大きな集団を創出しました。
しかし、今後においては、その集団が微妙な環境の変化についていけず、
アレルギーを起こしてしまう危険性をはらんでいるのです。
証券・金融業界の不況はバブル崩壊が原因のように言われていますが、
それはあくまで引き金であって、実は自らが“depend on”してきた反動に、
苦しんでいるのが真の姿だろうと思うのです。
今は「赤信号、みんなで渡ればみんな死ぬ」ことを考えなければならない時代なのです。
“depend on”とうまくつき合う
“depend on”の心理は、個人の自主性を阻害し、
ひいては組織を疲弊化させ、中堅・中小企業でも大企業病にかかります。
反面、“depend on”が成功に寄与し、今でも重要な要素であることもわかってきました。
では、私たちはどうすれば良いのか?
それは、“depend on”をタテ軸とヨコ軸の要素に応じて使い分け、
うまくつきあっていくことだと思います。
タテ軸とは、社内組織でいう上司・部下といったタテの関係、
取引関係では、メーカー→問屋→小売という関係をいい、
これらの関係の中では頼る心理を断ち、甘えをなくすことです。
社内組織のタテの関係で“depend on”しすぎると無益な社内派閥の発生原因となります。
取引関係において、小売店がメーカー・問屋に頼りすぎたり、
加工業者が親会社に頼りすぎると確実に企業の体質は弱まり、衰退していくのです。
ヨコ軸とは、社内組織でいう他部署であり、社外では同業者や地域社会のことをいいます。
ヨコ軸の関係者とは“depend on”を積極的に活用していくことをお薦めします。
これは、社内では他部門との連携・コミュニケーションを強化し、
相乗効果を高めることが狙いとなります。
また、同業者とは無益な競争を避け、
地域社会との共生を目指すことが重要だと思うのです。
人は、地位が上がれば上がるほど、我が侭な人間に陥り易いものです。
そしてそれは人に頼ってしまう習慣を作ることにもなります。
“depend on(頼る)”と“entrust(任せる)”とは、現象面では非常に似ていますが、
本質的に全く違います。
任せることは苦手で、頼ることに長けた人が多い社会で、
経営者だけはこうならないよう、万全の姿勢でいたいものです。
Adios(さらば) “depend on”