バイマンスリーワーズ
Bimonthly Words
心はどこにも置かない
~ ♬ 上を向いて 歩こう
涙が こぼれないように
思いだす 春の日 一人ぽっちの夜 ♬ ~
坂本九さんが歌い、誰もが口ずさんだ昭和の名曲です。
歌詞は永六輔さんが自らの体験を元に作りました。
安保闘争で多くの若者が反対運動に参加しましたが、
絶大な権力に屈し、無残な心で家に帰ることの繰り返し。
永さんもデモや市民運動に参加して敗者となった若者でした。
泣いてなんかいられないけど、泣かずにはいられない。
絶望の中で人は希望を見つけられるのだろうか…。
永さんは悲観にくれた思いを歌詞に託すことで、
多くの人に前向きに生きる勇気を与えました。
“上を向いて歩こう”は、
~ 幸せは雲の上に 幸せは空の上に ~
~ 悲しみは星のかげに 悲しみは月のかげに ~
と、人間の喜びと悲しみを叙情豊かに表現しました。
人生には光があれば、影もあり、
喜びがあれば、悲しみもあります。
いかなる人も片方だけで生きられず、
山あり、谷ありの人生が待っています。
企業においても同じような浮き沈みがあって、
経営者には逆境に置かれたその時に手腕が問われます。
逆境に強い経営者は 対極の特性を合わせもっている
私は多くの経営者とお付き合いをしてきた関係で、
逆境に強い経営者に共通する特性がわかってきました。
その一つ目は「対極の特性を合わせもっている」ことでした。
たとえば冷徹にみえるが、じつは温和な性格である人。
つまり、物事を冷静に鋭く見通すことができるが、
相手の感情を理解する温かい心も持っています。
日頃はケチだが、いざという時は気前がいい、
といったお金の使い方にも正反対の特性がある。
また、悪いこともできるが、悪いことはしない、
ケンカが強いが、ケンカはしないといった性格です。
ところが、このような経営者は攻めも守りにも強いため、
普通の人の何倍もの知識や情報が頭に詰まっています。
そこへ私的な問題や人間関係のゆがみが加わると、
雑念や妄想が発生し、頭の中が混乱してしまう。
これではいかに優秀な人でも真の力は発揮できません。
必要な知識や情報がいつでも出せる状態が必要です。
それは、AIと比較される頭脳の問題ではなく、
頭脳を支えている“心”の置き所のことです。
“心”が攻めと守りの中間にあるわけでもなく、
主要な所に分けてあることでもありません。
心の置き所という目に見えない問題は、
いかにして見出せばいいのでしょう。
心をどこにも置かなければ どこにでも心がある
沢庵宗彭(たくあんそうほう)は当時の幕府権力や朝廷の圧力に対して、
一歩も退かない生き方を貫いた臨済宗の名僧でした。
徳川将軍家の兵法指南役であった柳生但馬守に対して、
兵法と禅の極意を説いた「不動智神妙録(ふどうちしんみょうろく)」を残しています。
「不動とは動かないということ。智は智恵の智です。
動かないといっても石や木のように全く動かないのではなく、
心は四方八方、右に左と自由に動きながら、一つの物、一つの事に、
決してとらわれないのが、不動智なのです」
「千手観音は手が千本おありになりますが、
もし弓を持つ一つの手に心がとらわれてしまうと、
残りの九百九十九の手はどれも役には立ちますまい。
一つの所に心を止めないから、千本の手が皆役に立つのです」
(沢庵 不動智神妙録 池田諭訳:徳間書店)
~ 心はどこにも置かない ~
不動智は、どこにも心を置かなければ、
どこにでも心が行き届くことになり、
ならばどこにでも心があるという。
過去の失敗に心がとらわれず、
未来に対する不安にもとらわれない。
過去への執着や未来へのこだわりも捨てる…。
さあ、私たち凡人にそんなことができるのでしょうか?
禅宗の僧侶は座禅という厳しい修行を通じて、
心を無にすることで、悟りの境地を目指します。
しかし、私たちが修行に入るのは現実的ではないし、
せめてピンチに立たされた時の心構えでも教えて欲しい。
人間は逆境の中でしか成長できない だから逆境に感謝する
長引く円安で厳しい状況に置かれた経営者も少なくありません。
逆境はいつまで続くのか、いい時代は戻って来ないのか…。
目の前の状況を後ろ向きにとらえる人もあるでしょうが、
どのような心構えで受け止めるか…が分かれ道です。
そこで、“逆境に強い経営者”に共通する二つ目の特性は、
「どんな状況もプラスに受けとめる心を持つ」です。
良くも悪くも、与えられたすべての状態を、
プラスに考えて受け入れる大きな心です。
苦しい立場に立つと、誰だってグチをこぼしたくなります。
しかし、すべてを受け入れ、心の中で好転させるのです。
失敗が続いているなら「こうやってノウハウが溜まる」
と前向きな発想に切り替え、先頭に立って打開策を考えます。
人間は順風満帆の時には成長していません。
心に悲しみをもった逆境の中で成長するのです。
自分が成長できる逆境に置かれていることに感謝し、
逆境を心の中で好転させて成長する人生に変えましょう。
異例の短期決戦となった総選挙で権力構造が大きく変わりましたが、
分断が進む世界情勢の中で平和な国家を守っていけるのか。
しかし、どのような状態に置かれても肯定的にとらえ、
“上を向いて歩く経営者”でありたいと思います。
