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バイマンスリーワーズ

Bimonthly Words

主人公

2026年07月

「万物の霊長と言われた人間は二番目の存在になります」
人類は誕生してから、最も優れた存在として君臨しましたが、
この世は無常であり、ついにその座を明け渡す時が来たようです。
花園大学 仏教学科特別教授の 佐々木 閑氏はきっぱりと語ります。

「“人間性を持たないAIが人を超えることなどできない”
 といった主張は、この先どんどん説得力がなくなり、
 AIを最高の知性として承認せざるを得ない時代が来る」

人類は過去に一度、文字を発明した時代に危機があったと佐々木氏はいう。
文字で記録すると、記憶しないために人間の頭が悪くなってしまった。
しかし、文字と共存することによってより高次な文化形成を実現し、
当時の人間は文字を発明した危機を脱出した、というわけです。

生成AIは単なるプログラムで動くコンピュータとは違い、
人間と同じように言語を習得し、外界を見聞きします。
そこで得られた情報を体系的に組み上げ、推理し、
新たなものを生み出す能力を備えているうえに、
審美眼もあり、感情を表現することもできます。

AIの躍進は日本の就業構造を大きく変化させるでしょう。
経済産業省は「2040年の就業構造推計」で事務職が約440万人、
大学・大学院卒の文系で約80万人が余剰となる可能性があるという。

多くの人の仕事内容が変わり、職場も変わる人が増える中で、
誰もが新しい環境で力を発揮できればいいのですが、
中小企業の現実は非常に厳しいものがあります。

しがらみを抱えると 雑念や妄想にとらわれる

人生を通して本当にやりたいことに出会い、
末永く続けることができる経営者は幸せ者です。
それなりの成功を収めた創業経営者にはよく見られますが、
多くのしがらみを抱えた後継経営者の場合、そうはいきません。

本来は事業家としてやりたい仕事がありましたが、
急遽、実家の会社の面倒をみるために戻ったAさん。
ところが父が残した巨額の借金が次々と明らかになり、
常に銀行への気遣いが必要な日々に頭を悩ませています。

たまたま大手の下請けメーカーをしている妻の実家が、
後継ぎで困っていたため後継経営者として入社したBさん。
独自の技術力を活かして自社商品の取り組みを考えましたが、
大口得意先の依頼に振り回され、自立型経営は進まない状況です。

子会社の立て直しを要請され、社長を引き受けたCさんでしたが、
社員による不祥事が次々と噴出し、その対応に追われています。
これらの事案は社長就任以前に起こっていた問題ですが、
何のために社長になったのか…と戸惑いは隠せません。

会社が将来の発展に向けて重要な転換点にあるため、
覚悟して経営を引き受けたが、思い通りには進まない現実。
ところが「私に何ができるのか?」「なぜ、私はここにいるのか?」
と、経営のトップが雑念や妄想にとらわれているのは惜しい限りです。

なんとか将来への光が見いだせないか…と思っているものの、
心の中は雑念や妄想だらけ…。はたしてどうしたものか?

あなたの人生の主役は あなた自身である

~ 随処に主となれば 立処皆真なり ~
臨済宗の開祖 臨済義玄が残した言葉です。
どんな組織においても、どんな境遇であっても、
自分が主人公となり、自分の判断で行動するなら、
そこでの生き様はすべて真実である、という意味です。

映画やドラマに出てくる「主人公」は、禅に由来する言葉です。
主人公とは「本来の自己」つまり、本当の自分のことであり、
あなたの人生の主役は、あなた自身なのであって、
堂々と胸を張って生きなさい、との教えです。

私たちは様々な人とのつながり、つまり「縁」で支えられています。
ご縁のある多くの方のお力添えで、今を生きている一方で、
その人たちとの様々な“しがらみ”も背負っています。
AさんもBさんもこれまで支援していただいた方との、
“しがらみ”の中で苦しんでいるのが実態です。

Cさんの場合も自分が直接に関わっていませんでしたが、
トップなら、それが自分の知らない過去の不祥事であっても、
自分の問題としてとらえる“覚悟”が足りないのかも知れません。

「主人公」の教えは経営者の生きざまにピッタリですが、
社員一人ひとりに向けたメッセージでもあります。

出光興産の創業者・出光佐三は、社員の人間性を尊重し、
禅の教えを経営に活かした反骨精神に溢れた経営者でした。
「一人ひとりが経営者であり、仕事は完全に任せるのが“出光流”」
として、社員が依存心を捨て、主人公として活躍できる方針を貫きました。

佐三は入社式の訓示でこのように述べています。
「3年ほどして他社との商談があったら、他社の人は最後に、
 それでは持ち帰って上司に報告して返事します、と必ず言う。しかし、
 “これは自分が決める”と思ったらその場で『よろしい』と返事しなさい」
「主人公」という禅の教えを若い社員にも落とし込んだ、みごとな例です。

AI時代を生きる智慧 ~ ぶれない心は 自分でつくる ~

AIの発展は、私たちに大変な利便性を与えてくれる反面、
私たちのアイデンティティ(存在意義)を奪います。
「私なんか、この世にいなくてもいいんじゃない?」
と、人生に迷い、生き方を見失う人が増えるかも知れません。

しかし仏教の教えは、より高次のものを求めていると佐々木教授はいう。
「今、世の中で役に立っているから、人生の意味があるのではない。
 “自分自身で、自分がこの世で存在する意味をつくること”
 が仏教の教えであり、仏教はこれから役に立ちます」

仏教の中でも禅は、自分の心を整えて、
実際に何をすればいいのか、を教えてくれる。
まさに“ライフスタイル”(生きる生活様式)であり、
禅のライフスタイルがこれからの現代人の心を救うという。

私たち人類は、万物の霊長の座をAIに明け渡す転換点にいますが、
どちらが上か下か、なんてどうでもいい話なのかも知れません。
人間一人ひとりが「主人公」の意識をもって行動するなら、
イキイキとした、何者にも代え難い輝きを発するでしょう。

ボーっとしていると、なんでもやってのけるAIによって、
私たち経営コンサルタントが最も早く職を失います。
AIよりも愛のあるアドバイスができるよう、
これからも日々精進して参ります。