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バイマンスリーワーズ

Bimonthly Words

遠慮近憂

1992年07月

遠慮近憂とは、論語の一節です。
正しくは、「人、遠慮なければ必ず近憂あり」
人は、遠い将来のことを考えた上で行動しなければ、
必ず身近に心配事が起こって来るものであるという意味です。

以前、地元の中堅問屋のT社長が来社された時、次のような話をされました。
50代半ばのT社長はゴルフ焼けでしょうか、たくましい感じの顔を些かゆがめながら、
「実は、長年一緒にやってきた常務(義理の弟)が私に反論し、
 思うとおりに動いてくれないのです。
 仕事はよくやってくれるのですが、経営陣として今の状態では、他の幹部社員にも悪影響がでそうです。
 何とかならないでしょうか」
というお話でした。

T社長は、裸一貫で事業を興し、幾多の苦労を乗り越え、
当時では、30億程の商いをされる程まで成長されていました。
誠実で無茶をしないタイプで、努力の人という感じのする経営者でした。

私は、その他にさまざまなことを聞いた最後に、
「以前から常務は、社長に反発されていたんでしょうか?」
とたずねました。
T社長は少し考えて、
「若い頃からそうだったが、最近特にひどくなったと感じる」と話されました。

社内の人間関係に心を奪われる

私は、“これだな”と思い、次のような話をしました。
「社長、常務の社長に対する感情や態度に以前との大きな変化はないと思います。
 それより、常務の態度に気をとられている社長の方が心配です。
 以前は、そんな常務とでも、ここまで会社を引っ張ってこられた情熱が、
 社長の中にあったに違いありません。
 元々、社長の夢は「常務が更正すること」ではなく、
 地域でダントツの企業を作ることにあったのではないでしょうか。
 ところが、道中端で常務の力添えの足りないことを嘆いておられる…。
 今こそ、社長自身の力で、自分の夢に邁進する時でしょう」

T社長は、
「なるほど、そうでしたね。
 私が独立した時の夢は、京都でNo1の会社になることでした。
 若い頃は、このことだけを考えてやっていましたが、最近は生活が裕福になったせいか、
 すっかり忘れていました。もう一度初心に還って頑張ります」

とおっしゃってお帰りになりました。
もちろん、その後のT社長は、京都でNo1の地位を確立され、
今では関西でトップクラスになるための努力をされています。

自分の信じる遠くをしっかり見つめる

皆様方は、このような状態に陥った経験はないでしょうか。
私もそうですが、本来の目標を見失い、「イカン、イカン。」と思うのです。
些細なことで目標を見失っている自分に気づき、自分を元に位置へ引っ張り戻すのです。

卑近な例ですが、私の高校時代は甲子園を目指す球児でした。
下積みの頃、グランド整備の時にファウルラインがまっすぐ引けない私に対し、
監督が、
「ファウルラインを引くときは、あの遠くの外野ポールだけを見て引け!」
と言われました。
不安ながらやってみると見事にまっすぐ引けたことを覚えています。

また、幕末の雄、坂本竜馬の肖像画を見ると気づくことがあります。
袴に革グツ、腰に日本刀、懐にはピストルと理解しがたい風体ながら、
その眼は、しっかりと自分の信じる遠くを見つめているのです。

ご存じの通り竜馬の生きた時代は、波瀾万丈、現実を生きるのがやっとの時代でした。
しかし、竜馬は浦賀沖に来航した黒船を見て、
日本の将来に向けて、その血をたぎらせたのでしょう。

身近な問題に心を奪われない

身近な問題を無視することはできません。
目の前の問題を着実に解決してこそ、企業の発展があると私は信じています。
しかし、トップや幹部の方がそこだけにとらわれてしまうことが恐ろしいのです。

遠い将来を見ることを忘れ、近くのことばかりにとらわれることは、
羅針盤なしで航海に出ているようなものでしょう。
身近な問題にとらわれて悩み、疲れ果てて気がついたら、
白髪の浦島太郎になっていたということにならないようにしたいものです。