経営者視点になったつもりの擬態に立ち向かう ―(2)あなたは本当に「思考」しているか?
前回は、経営者視点に立てないケースとして、『経営者視点に立っているつもり』という巧妙な擬態に着目し、「適切な意思決定をしたつもり」になっているだけで、実際は判断していない、「判断の逃避症候群」について考えみた。
今回は、「ちゃんと考えているつもり」になっているだけで、実際には大局的思考に至っていない、「思考の停止症候群」について深掘りしてみたい。
①「思い込み」という名の視野狭窄(一点突破型)
「私はこれで結果を出してきた。この方法が正しいはずだ」
「うちの業界はちょっと特殊だから、一般論は当てはまらない」
過去の成功体験や専門領域の正解をすべての局面へ強引に当てはめようとする擬態である。素直に多様な意見や視点を受け入れることを避け、それ以上考えることをしない。
自分の「思い込み」に束縛され、視野狭窄になっていることに気づかずに、一生懸命考えているつもりになっている。
この擬態は、「全体」を俯瞰することから逃げている。部分の正解が全体を壊すリスクを直視せず、多面的な視点を放棄している。猪突猛進のごとく、偏った考えだけで一点突破しようとする。
経営は「全体最適」を思考し続けなければならない。一つのピースに固執せず、常に全体の絵を組み直す。自らの「勝ちパターン」を疑う勇気を持たなければならない。
②「前例」という名の思考停止(過去踏襲型)
「それ、昔から変わらないうちのやり方です」
「前任者が決めた仕組みなので、私が変えるのも…」
「今までこうだった」「それがうちのやり方だ」と、前例や慣習を無批判に受け入れ、惰性で回そうとする擬態である。
この擬態は、過去の延長線上に安住し、時代や環境の変化に合わせた能動的な変化について思考することを止めている。
現状維持は後退であるという真実。慣習という名のレールを自ら脱ぎ捨て、「今、この瞬間に最適な解は何か」を「ゼロベース」で問い直し続けなければならない。
③一生懸命という名の甘え(プロセス偏重型)
「うちのチームは本当に頑張っているんです。結果はこれからだと思って」
「これだけやって結果が出ないなら、もうどうしようもない」
かけた時間の量や熱意といった「努力の量」を盾に、成果が出ていない事実をよしとする擬態である。
この擬態は、汗をかくことで「考えていない罪悪感」を消し、どうすれば勝てるかという戦略的思考を止めている。
プロは結果(アウトプット)が問われる。努力を免罪符にせず、なぜ勝てないのかという問いから逃げない、結果への執着を持たなければならない。
結果を出すまで思考し、行動し続けなければならない。
| 擬態の正体 (タイプ) |
典型的な「ポーズ」 | 停止している対象 | 真の経営者視点へのヒント |
|---|---|---|---|
| 思い込みという名の視野狭窄 (一点突破型) |
「私はこれで結果を出してきた」 | 「全体」の俯瞰 (成功体験への固執) |
全体最適 自らの「勝ちパターン」を疑う |
| 前例という名の思考停止 (過去踏襲型) |
「それがうちのやり方ですから」 | 能動的な変化 (慣習への安住) |
ゼロベース思考 「今、何が最適か」を問い直す |
| 一生懸命という名の甘え (プロセス偏重型) |
「これだけ頑張っているのだから」 | 戦略的思考 (勝因の探究) |
結果への執着 努力を免罪符にせず勝つまで考え抜く |
上記3つに当てはまる節があれば、「全体最適」「ゼロベース思考」「結果への執着」を持てているか、自問自答することから始めることである。
以上2回に分けて、経営者視点に立てないケースとして、『経営者視点に立っているつもり』という巧妙な擬態について触れた。
判断から逃げることなく、思考を停止することなく。
これらの擬態を剥ぎ取った後に残る、逃げ場のない『裸の自分』で、自分は何を成し遂げたいのか。
そこからしか、真の経営は始まらない。