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主宰講師ブログ

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リーダーとしての“器”を磨く① ~多様な「視点」を行き来する~

公開日:2026年08月25日

「組織はリーダーの“器”以上にはなれない」と言われる。

「あの人は“器”が大きい」
「経営者として、もっと“器”を広げたい」
「幹部には、もう少し“器”を磨いてほしい」
など、“器”という言葉を一度は使ったことがあるのではないだろうか。

しかし、そもそも、この“器”とは何だろうか。
人柄のことだろうか。胆力のことだろうか。人徳のことだろうか。
あるいは、人を受け止める度量や器量のことだろうか。
もちろん、それらも含まれるだろう。

ただ、リーダーにとっての「器」を、
もう少し実践的に捉えるならば、私は次のように考えている。

 器を磨くとは、より豊かに物事を捉え、より適切に判断できるようになること。

リーダーの最大の役割は、判断(意思決定)することである。
経営とは、正解のないなかで判断を重ねていく営みだと言ってもよい。

経営において、常に正解があるわけではない。

  • 投資すべきか、控えるべきか。
  • 採用すべきか、やめておくべきか。
  • 厳しく指摘すべきか、本人の気づきを待つべきか。
  • 任せるべきか、介入すべきか。
  • 短期の利益を優先すべきか、中長期の成長を優先すべきか。

こうした場面で問われるのは、単なる知識量ではない。
最後は、物事をどう捉え、何を大切にし、どのように判断するかである。

だからこそ、リーダーには磨かれた“器”が求められる。

では、“器”を磨くためにはどうすればよいのか。
私は、3つの「視」の切り口で捉えることで、そのヒントを得ることができると考える。

すなわち、

  • 視点=「どの立場から物事を見るか」
  • 視野=「どこまで広く見るか」
  • 視座=「どれだけの高さから見るか」

の3つである。

今回は、このうち「視点=どの立場から物事を見るか」について触れてみたい。 

多様な視点移動

例えば、あるメーカーが、重要なお客様への納期が遅れそうになっている場面を考えてみたい。

お客様の立場なら、
「自社の計画に影響が出る」
「本当にこの会社に任せ続けてよいのか」
と不安になるかもしれない。

営業担当者の立場なら、
「お客様にどう説明すればよいか」
「信頼を失わないために何ができるか」
と考えるかもしれない。

製造・現場の立場なら、
「いまの人員や設備では、これ以上の対応は難しい」
「無理をすれば品質に影響が出る」
と感じるかもしれない。

仕入先や協力会社の立場なら、
「急な変更にどこまで対応できるか」
「追加コストや負荷をどう考えるべきか」
と思うかもしれない。

管理部門の立場なら、
「今回の遅延は一時的な問題なのか」
「慢性的な業務設計や人員不足の問題なのか」
と考えるかもしれない。

同じ「納期遅延」という出来事でも、立場が変われば見え方は大きく変わる。
部門間の“壁”が生まれる一因も、こうした立場による見え方の違いにある。

リーダーに求められるのは、これらの多様な視点移動である。
自分の立場だけでなく、お客様、営業、現場、仕入先・協力会社、管理部門など、さまざまな立場に視点を移すことができるか。

その上で、「短期的に納期を守ること」と「品質・採算・社員の負荷・顧客との長期的信頼」を
どう両立させるかを考えることが求められる。

一つの視点だけに立てば、判断はしやすくなる。
しかし、それは同時に、部分最適に陥る危険を孕んでいる。

経営判断で難しいのは、それぞれの立場に、それぞれの正しさがあることである。

営業には営業の正しさがある。
現場には現場の正しさがある。
顧客には顧客の正しさがある。

いずれも間違いではない。
しかし、いずれか一つだけでは、経営判断としては不十分である。
リーダーは、複数の視点を行き来しながら、より全体にとって望ましい判断を探っていかなければならない。

視点移動の原点フォームの終わり

 では、この視点移動の原点は何か。

突き詰めていくと、非常に基本的なことに帰結する。
それは、「自分の見え方を絶対化しない」ということである。
換言すれば、「自分の立場だけで見ない」。
つまり、「相手の立場に立って考えること」である。
子どもの頃に教わった至極当たり前のこの姿勢こそが、視点移動の原点ではないだろうか。

なぜ、その人はそう言わざるを得なかったのか。
なぜ、現場はその対応にならざるを得なかったのか。
なぜ、お客様はそこまで納期を急いでいるのか。
自分とは異なる立場から見たら、この判断はどう映るのか。

お客様の期待、営業担当者の焦り、現場社員の苦悩、取引先の事情・・・
自分がその立場を経験していなくても、想像しなければならない。

つまり、器を磨くためには、自分には見えていないものを想像する力が必要になる。

ここで大切なことは、
相手の立場を理解することと、相手の要求をそのまま受け入れることは違う、
ということである。

例えば、
お客様の視点に立つからといって、お客様の要求をすべて受け入れるわけではない。
現場の視点に立つからといって、現場の事情だけを優先するわけでもない。

それぞれの立場から何が見えているのかを理解する。しかし、最後はリーダー自身が判断する。

したがって、多様な視点を持つことは、判断を放棄することではない。
むしろ、より豊かな材料をもとに判断するために必要なことである。

何か判断を迫られたとき、一度、自分に問いかけてみてほしい。
「私は今、誰の立場から見ているのか」
「まだ立っていない立場はないだろうか」
「その人の立場から見れば、この問題はどう見えるだろうか」
ほんの少し視点を移すだけで、それまで見えていなかったものが見えてくることがある。

 こうして意識的に視点を移す日々の積み重ねが、リーダーとしての“器”を磨くことにつながっていく。

最近、どれだけの立場に立って考えただろうか。