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バイマンスリーワーズ

Bimonthly Words

心ひとつの置きどころ

2003年03月

むかしむかし、京都五条大橋のたもとにお茶屋さんがありました。
お茶屋さんというのは、橋を渡る人たちが休憩をするところです。そのお茶屋さんに『泣き虫ばあさん』と呼ばれるおばあさんが住んでいました。泣き虫ばあさんは、いつも「エーンエーン」と泣いてばかりいるのでした。
ある日、お店の前を通ったお坊さんが思い切ってたずねました。

「おばあさん、どうしていつも泣いてばかりいるのですか?」
「じつは、私には息子がいるのです。息子は傘屋をしています。お天気の日には傘が売れないでしょう?それがたまらなく悲しくて泣いているのです」
「けれど、おばあさんは雨の日も泣いているじゃありませんか?」
「よくぞ聞いてくれました。実は私にはもう一人息子がいるのです。その息子は下駄屋をしています。雨の日は下駄が売れないでしょう?晴れの日には傘が売れず、雨の日は下駄が売れず、息子たちのことを思うとたまらなく悲しいのです。うっうっ・・・」
おばあさんはまた泣き出しました。

ところが、お坊さんは大きな声で笑いだしたのです。
「なぜ、笑うのですか?私がこんなに悲しいのに!」
「いいですか、おばあさん。雨が降ったら傘屋の息子さんのことを考えて傘が売れると思いなさい。晴れの日には、下駄屋の息子さんのことを考えて下駄が売れると思いなさい。そうしたら悲しくなくなりますよ」

次の日は雨でした。空を見上げたおばあさんは、傘が売れると思ってニコッと笑いました。
その次の日は晴れでした。おばあさんは下駄が売れると思ってまたニコッと笑いました。
雨でも晴れでもニコニコ笑うので「ニコニコばあさん」と呼ばれるようになりました。

これは古くから語り継がれてきた「泣き虫ばあさん」というお話です。
さて、この泣き虫ばあさん、どうも最近の経営者、特に、昔の良かった時代が忘れられない中小企業の経営者と似ているような・・・。

悪玉菌が組織を崩壊させる

たしかに近年の日本経済はずっと雨続き。ところによってはドシャ降り状態ですから泣きたくなるのは当たり前です。
実質経済成長率はもちろんマイナス、完全失業率は5.5%、企業の倒産はとどまるところを知りません。上場企業でも昨年一年間で29社が姿を消しています。
株や土地の価値は、ほぼバブルが形成される前のレベルにまで後戻りしてしまいました。一説によるとなんと1158兆円もの資金が日本全体で消滅したといいます。

ああ、もったいない…。これまでの17年間は何だったのでしょうか? 思わず泣きたくなります。
こんな経営環境の中で、多くの中小企業は次のような苦しい状況にあります。

 ・公共需要、大口顧客からの仕事が大幅に減っている
 ・競争相手との顧客争奪合戦で顧客を失っている
 ・中国など生産の海外移転とデフレ圧力による価格下落に対応できない
 ・銀行の貸し渋り、貸し剥がしで資金繰りが苦しい

結果、ピーク時に比べて売上が半分以下になった、という中小企業も少なくありません。業績の低迷と資金繰りの悪化で、賞与も出ない、人員はギリギリなので休みも取れず、心身共にくたくた。
経営者も従業員もここまでひどくなると、「政府は何をしているのか!」「銀行が諸悪の根源である!」といった考えに陥ってしまい、思わずそれが口に出てしまいます。

じつは、これが悪玉菌なのです。悪玉菌はまず人々の心の中に発生し、思考の仕方によって培養されて、それが表情や言葉となって外に吐き出されます。社長や幹部社員から発せられた悪玉菌は強烈な威力をもち、それはインフルエンザウィルスのように職場や家庭に伝染し、広がっていきます。

人の集まるところには目には見えない悪玉菌と善玉菌が混在し、どちらかが勢力を振るっています。あなたの職場では善玉菌が影をひそめ、悪玉菌が蔓延してないでしょうか?
もしそうならば、はびこっている悪玉菌を早く退治して、善玉菌を活性化させるように努めなければなりません。
私たちはどうやって悪玉菌をやっつけ、善玉菌を活性化させればいいのでしょうか?

安住の地は「楽」の中にあるわけではない

先日、弊社の近くにある寺町通りを歩いているときでした。
その名が示すように昔から多くのお寺があった通りですが、今は派手な電器店の看板の間々にその門があります。私は小さなお寺の門前に書かれている文字に足が止まりました。

「苦も楽も 心ひとつの 置きどころ」

何か深いものを感じました。頭に叩き込んで、歩きながら考えをめぐらせてみました。

私はこれまで「苦」と「楽」は別々のものと考えていました。もし、安住の地があるとすれば、それは「楽」の中にしかないと思っていました。だから、どんな苦労でもいつかは楽な世界、安住の地にやってくるから頑張って乗り越えようと考えてきました。

それがどうも違うようなのです。
“心ひとつ”とあるが“苦と楽”はふたつ。一つしかない心はどちらに置いたらいいのか。苦のときには楽を考え、楽のときに苦を考えればいいのか。
どうも違う…。
そうか、苦と楽を分けて考えること自体がおかしいのか・・・。楽があるから苦を感じる、苦があるから楽を感じるのだ。
比較をしない一元の世界、つまり楽なら楽に、苦なら苦になり切ってしまえば、苦も楽も実質は同じだということなのか。だから苦と楽は一体のものなのだ。

なるほど…そう考えると分かることがある。
たとえば、ゆっくり昼寝ができる時間が欲しいと思っていても、正月休みに二日ほどゴロゴロしていると、逆に苦痛になってくる。
豪華な家に広い土地、あり余るほどの預貯金をもち幸せいっぱいに見えるのに、多発する窃盗事件の最中で、いつ財産を狙われるか不安でならない毎日を過ごしている人がいる。財産がなければ不安はないのに、皮肉なものだ。
また、巨額の相続財産をめぐって兄弟間で醜い争いをし、ときには命を絶たれてしまう人も少なくない。

逆のこともあります。最近の二十五歳ぐらいまでの若い人は、賞与が出ない、アルバイトの時間給が上がらなくても、悲観的にはとらえていないという。
なるほど、彼らはバブル景気のことを体験していないので比べるものがない。だから、今の状態が当たり前のように感じているのか…。

「幸せ」があるのではない「幸せを感じる心」があるかどうかである

メーテルリンクの「青い鳥」では、貧乏だったチルチルとミチルが、幸せの青い鳥を求めて旅に出ます。残念ながら、幸せの青い鳥というものはどれだけ探しても見つかりませんでした。
ところが、幸せは自分の心の中にあったことに気づくのです。
つまり、「幸せ」というものが実体としてあるのではなく「幸せを感じる心」があるのです。

楽は苦でもあり、苦は楽でもあるのです。ということは、苦と楽は一体のものであり、苦とか楽とかは感じる人の心のもち方次第なのです。
そして…つらいこと、苦しいこと、思い通りにいかないことは、その障壁を乗り越えた時が、また障壁が大きければ大きいほど、乗り越えた喜びもまた大きいのです。

さていかがでしょう、そろそろ私たちは、多くの日本人が作ってしまった心の中の悪玉菌感情、たとえば厳しいとか、不景気だとか、苦しいといった消極的な感情、を取り除く時期に来ているのではないでしょうか?

組織の中で20%の人でいいのです。2割の社員が今の状態を、それがどれほど大変な状態であっても「善し!」と考えましょう。これが善玉菌になります。
この善玉菌を、表情にして、言葉というカプセルに入れて会社やお客さんの前で思いっきり蒔いてください。そうすれば、人々の心の中に善玉菌が入っていきます。
厳しい局面に置かれていても善玉菌が身体に入った人は、どうにかして良くしていこうという、前向きなプラスの感情が生まれます。そして、このプラスの感情の中に新商品や販売を工夫するアイデアが潜んでいるのです。

じつは、喜びや楽しみを感じるプラスの心の中にしか、建設的なアイデアは培養されないようになっているのです。イヤイヤでものごとに取り組んでもロクな考え方は浮かんでこないのはこのためです。
人の上に立つあなた、あらゆる事象に対して、それがどんな厳しい状況に置かれていても、「善し!」とプラスにとらえ、「花咲か爺さん」が枯れ木に花を咲かせるのように広めていき、喜びと楽しみを実感しようではありませんか。

ところで、冒頭の泣き虫ばあさんの話に出てくる息子さんの商売、傘屋と下駄屋は儲かっているのでしょうか? 商売人としては気になりますね。
私だったら、傘も下駄もどちらも店に並べてみますが、さあ、うまくいくでしょうか。